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社内外の皆様に、ご報告します。僕はこのたび、フリービットの理念にフルタイム/フルコミットで働く「フリービット常勤取締役」を離れ、フリービット人材戦略研究所の所長として「フリービット非常勤取締役」になります。
会社法上は常勤・非常勤の違いはなく(2013年8月現在)、このような報告には法令上の義務はないものの、やはり説明責任があると判断し、ここで、その背景を公開したいと思います。 まず、僕には介護という大きな制約条件があります。ひとりっ子として生まれ育ち、長女である妻と結婚した宿命です。いずれは、だれもが直面することになる問題だとはわかっていても、なかなか対応するのが苦しい事実です。 対応しなければならない介護案件が発生し、大事なときに仕事にコミットできないケースが事実として発生しています。こうした状況から、フリービットのステークホルダーに対して、常勤取締役としての責務は果たせないと判断し、取締役会より非常勤化の承認をいただきました。 次に、僕自身の人生についてです。僕は、フリービット創業者の石田宏樹と出会って以来、彼の描くITの未来像にワクワクしてきました。今も、本当にワクワクしています。ただ、僕が石田から学んだのは、ITの未来像のみならず、社会的な問題をビジネスによって解決する起業家精神もその1つでした。自覚はなかったのですが。 そんな中、東日本大震災が起こりました。 実は、僕が27歳のときにオランダに移住するという転身を決めたきっかけも、台湾大震災(1999年9月)を台湾出張中に経験したことでした。この2つの震災は、自分もいつかは死すべき運命にあることを、強く僕に自覚させたのです。 ●台湾大震災からフリービット参画まで 台湾大震災のとき、僕は台湾・新竹にあるホテルの9階で寝ていました。そして次の日の朝、明るくなってから、ホテルのすぐ近くの建物が倒壊しているのを見ました。それほど大きな地震だとは思わなかったので、ショックでした。 僕は当時、勤務していた会社の上司に「どこでもいいから、海外に駐在したい」ということを常々述べていました。しかし、いくら希望を伝えたところで、経験の浅かった当時の僕を海外駐在させるような判断は、会社として合理的なものではありませんでした。 地震で倒壊した建物をジッと見つめていた僕は、誰かから「海外で暮らしていいよ」という許可をもらうのを待っていることはできないと思ったのです。そこで僕は、自分で「つて」を見つけて転職し、台湾大震災から1年を待たずに、2000年8月にはオランダに着地していました。 フリービットとの出会いは、オランダに暮らして8年後のことでした。当時のブログ記事『『戦略の教科書』を、社員教育に利用していただいています。』が、そのときのワクワク感をよくあらわしています。 フリービットが日本で出願している特許を読んでみると、まずCEOである石田氏がほとんど全ての発明にからんでいることに気が付きます。技術の解るリーダーというのは、特に日本では貴重な存在です。マネジメントであれば後からいくらでも学ぶことが可能ですが、技術は普通そうは行きませんからね。(中略)その後、このブログ記事を読んだ石田から、お礼の連絡をもらいました。それから、僕の一時帰国にあわせて、僕は石田との会食の機会を得たのでした。その場で僕は、石田の魅力にとりつかれ、帰国とフリービットへの参画を決めて「握手」をしたのです。 そういえば「握手」をした会食の席では、報酬などの話はまったくしなかったのですから、ビジネスパーソンとしては、どうかしています。それだけ、これがビジネスを超えた出会いだったのだと、今はわかります。 そうして僕は、愛するオランダの永住権を捨てて、2009年4月に帰国しました。オランダには、ほぼ9年間暮らしていたことになります。帰国直前に、僕は複数のブログ記事を書いています。その中にある『ある冬の日、クラウディアの家族とのお別れ。』という記事には、オランダ人の友達との別れを前にした当時の自分の気持ちが、ストレートに表現されていました。 どうして僕たちは、お別れしないとならないのだろう?僕たちには、自分で自分に課した「約束」があり、それを果たすためには、こうしたお別れも受け入れなければならないからです。しかし、自分の「約束」のために生きるからこそ、僕たちはお互いのことを魅力的だと感じるのであり、目を赤くさせながらも別れに納得できるのでしょう。これを「友」と言うのだと、中年になった今は解ります●フリービットでの日々とこれから フリービットは自分との相性がとてもよく、帰国してからというもの、エキサイティングで楽しい毎日を送ることができました。なによりもやはり、フリービットでの日々こそ、僕が本物の起業家と仕事を共にした、はじめての経験でした。 東日本大震災がなければ・・・僕はこのまま、常勤の取締役は難しくても、介護が終わるまでは時間短縮勤務としてフリービットに残っていたかもしれません。 しかし東日本大震災は起こりました。この震災で僕は、自分の中にまた、どうしても機会を待っていることはできないテーマを見つけることになったのです。 僕の予測する日本の未来は(1)効率化・自動化によって、多くの人々の仕事がなくなる(2)仕事がないのに社会保障費が膨らみ可処分所得は減る(3)世界人口が100億人にせまり、希少資源となる食糧とエネルギーの価格が高騰する、というものです。 そんな日本で、子供たちが生きていくということを考えると、いたたまれない気持ちになります。石田に学んだ人間として、僕は、この未来予測が現実のものとならないようにしたいと、心から思ったのです。自分の人生を、これにかけたいと。 介護により、常勤の取締役としての仕事はできません。かつ、僕として、自分の人生をかけて実現したいことができました。 この背景から、僕は、フリービットの描く未来に対しては、人事戦略の立案など、限定的に貢献し、残りの時間は、まずは東日本大震災で傷ついた被災地に雇用を生み出すべく、起業家として、ビジネスの力で復興に関わることにしました。 被災地からはじめ、さらに疲弊していく国内地方の活性化を行い、遠くない将来、世界にも出ていきたいと考えています。 ●むすび フリービットのみなさま。僕の、みなさまとの関わりはずっと少なくなります。それでも僕は、石田を通して、フリービットに関わりつづけます。それに、フリービットには、そんなことではビクともしない一級の経営者たちがいます。そうした経営者たちに学び、自らも経営者となり、フリービットの理念と自らの夢を実現してください。 そして社外にてフリービットを支えてくださっているみなさま、どうか、フリービットを暖かく、かつ厳しく見守ってください。僕も、非常勤の取締役として、できるかぎりのことをします。しかし僕が、たとえ非常勤であってもフリービットの取締役にふさわしくないというときは、その旨、いつでも審議にかけてください。 僕には誇るべき先祖があり、僕の成功を祈ってくれる家族と友達がいます。これから僕は、そうした方々からの期待に恥じぬよう、また子孫が誇りに思う先祖の一人となれるよう、起業家として生きて行きたいと思います。 どうか皆様、これからもご指導のほど、よろしくお願い致します。 2013年8月18日 酒井 穣 ゆく河の流れ #
by ned-wlt
| 2013-08-18 10:49
| お知らせ
僕たちには、家族や親友のように、とても大切な人々がいます。そこには優先順位など付けがたく、とにかく、少しでも多くの時間を、そうした大切な人々と過ごしたいと考えています。
しかし、生きていくことの難しいところは、そのような大切な人々との時間が、仕事や勉強の時間に奪われてしまうことです。また、たとえ仕事や勉強の時間によってではなくとも、家族や親友の数が増えてくると、その全員と、それぞれに濃密な時間を過ごすということも不可能になっていきます。 こうした、大切な人々との時間がバラバラになり、かつ、短時間化していくということは、多くの人を苦しめています。で、ここからが重要なところですが、この苦しみを解消するのは、単純に、時間配分を変更することではなさそうだ、ということです。 ある日、僕は、マグロ漁船の出港を見送る人々の中にいました。 マグロ漁船は、一度漁に出ると、1年以上もの間、出港した港に帰港することはありません。つまりマグロ漁船に乗船するということは、長期間にわたって愛する家族や親友と会うことができないということです。 僕は、マグロ漁船の出港、すなわち「お別れ」の瞬間に立ち会いました。そこで見た、今まさに運命によってバラバラにされようとしている人々の姿は、僕の予想を裏切って、決して悲壮なものには感じられなかったのです。当然、別れを悲しんでいるとは思うのですが、なんというか、とても幸せそうに見えました。 船上で準備に余念のない、力強くかっこいいお父さんたち。見送りにやってきた多くのご家族、ご友人たちの笑顔。美しく風に流されていく紙テープの束。そして、そこにいる皆を勇気づける、メガホンを通した別れのスピーチ・・・。 もちろん、仕事や勉強が忙しくて、大切な人と過ごす時間が少ないということ自体は、良いことではありません。特に、そうした大切な人々が病気や困難を前にして弱っているときは、できるかぎりの時間を、大切な人々のために割くべきでしょう。 だからといって、ただ仕事や勉強をやめて、そのような大切な人々と「常に」一緒にいる状態が理想的かというと、そうでもなさそうです。定年退職後の夫婦生活というのが、必ずしもハッピーなものばかりとはいえないあたりに、このヒントがあるように思います。 何がポイントなのかというと、それは、自分が相手のことを、とても大切に思っていることを「伝える」ということだと思います。 いかに一緒の時間を過ごしてはいても、喧嘩ばかりしていては意味がありません。お互いのことをお互いが大切に思っていることが相互に伝わらなければ、一緒にいたとしても、余計に苦しむことになります。 逆に一緒にいられる時間は短くても、相手のことを大切に思っていることを、双方が伝えられているなら、人間はそれぞれ、元気に生きていけると思います。 大切な人々との時間がバラバラになり、かつ、短時間化していくことに苦しんでいるとするなら、まずは、その苦しみ自体を、ストレートに相手に伝えるべきだと思います。 その苦しみ自体が、自分が相手のことを大切に思っているという本心を示しています。だから、お互いにその苦しみを伝えあうだけでも、苦しみそのものが減るのを実感できるはずです。 僕が、マグロ漁船の出港に見たのは、皆が、誰かを本気で愛しているという事実でした。別れに際して、人々が、お互いの苦しみに深い共感を示し合うという奇跡の瞬間です。 そんなわけで、今の僕は「あなたのことが、自分にとって、とても大切です」というメッセージを発信し、相手にそれを理解してもらうことのほうが、ただ一緒にすごす時間を長くすることよりも、ずっと重要だと考えているわけです。 (今日は早く寝ます) ある日、気仙沼にて ●無料メルマガ『人材育成を考える』もよろしくお願いします。 ●twitterもやってます:http://twitter.com/joesakai ■ 新刊発売中です! 新刊は『ビジネスでいちばん大事な「心理学の教養」』という本です。ビジネスにおいて特に知っておくべき心理学のキーワードを、マーケティングや人事など、関連する実務の分野にひもづけて整理してみました。自分用にメモとして長いこと管理してきたものだったりします。よろしければ書店などで手に取ってみてください。 #
by ned-wlt
| 2013-08-09 22:53
| 時事評論のまね
必死になって、目の前の仕事に取り組むとき、僕たちには充実感が与えられます。こちらを「白」としましょう。
しかし同時に、そうした日々の仕事を「まるで意味のないこと」という具合に切り捨てようとする自分もいます。これを「黒」とします。 まず、ただひたすらに「白」で生きるような状態は、自分の人生に疑問を持たないということでもあり、きつくいえばバカです。 では、だからということで、無理やり暗い文学に浸るような「黒」だけで生きるのは、たった一度の人生がもったいないでしょう。こちらも、バカと言わざるを得ません。 だからということで、白と黒を合わせて「灰色」で生きればよいのかというと、それも違います。「灰色」であるということは、ウジウジと悩みながら仕事をするということであり、それでは仕事の成果がでるはずもありません。 成果の出ない仕事を楽しめる人間などいませんから、こうした「灰色」はいずれ「黒」に近づいていくでしょう。これまたバカというわけです。 思想家の浅田彰は、26歳のときの著作で、次のように述べています。 対象と深くかかわり全面的に没入すると同時に、対象を容赦なく突き放し切って捨てること。同化と異化のこの鋭い緊張こそ、真に知と呼ぶに値するすぐれてクリティカルな体験の境地であることは、いまさら言うまでもない。簡単に言ってしまえば、シラケつつノリ、ノリつつシラケること、これである。まず僕たちは、仕事であれ勉強であれ、目の前にあるものごとに全面的に没入する必要があります。つまり「白(ノリ)」であることを否定して、生きていくことはできないわけです。しっかりやることから逃げて、人生はないということです。 しかし同時に、僕たちはそうした自らを否定できるだけの「黒(シラケ)」を抱えていなければ、それはロボットの人生であり、人間として成長していくことはできないように思います。 浅田彰は、このように、白と黒を混ぜることなく合わせ持ち、その緊張の中にあることを「知」と呼んだのです。なんと優れた洞察でしょう。 僕は最近、この洞察に、ちょっとした追加をしています。それは、このような白黒は、より高次の白黒を得ることでしか解消できないということです。 センスや運、一夜漬けで勝利を手にしてきた人間は勝負弱い。僕はこれまで頭の回転が速く、要領が良く、勢いに乗っていると思われる人間と何度も戦ってきたが、ただの一度も負ける気はしなかった。それはなぜか。彼らと僕とでは迷ってきた量が圧倒的に違うからだ。学校は楽しい(白)という気持ちと、学校なんて行きたくない(黒)という気持ちは、どちらも真実でしょう。ですから、学校は通うに値するかということについて白黒をつけてしまうことは「知」とは言えません。 しかし僕たちは学校を卒業し、あらたに、仕事をしっかりこなそう(白)という気持ちと、こんな仕事はつまらない(黒)という気持ちの緊張を得ることになります。このとき、学校は通うに値するかという緊張が終わっていることが面白いです。 仕事のスケールが大きくなって行くにつれて、過去の低次元な緊張はどうでもよくなります。より解消の難しい白黒の緊張が得られるからです。 自分がお茶をだすべきか、そんな仕事は自分の仕事ではないとつっぱねるべきか。売れなくてもやるべきか、売れないから止めるべきか。従業員に高い給与を出すべきか、人件費を抑えて利益を確保すべきか。自社の利益を優先させるべきか、困っている人々を助けるべきか。 白黒のはざまで緊張を感じながら生きること、そして緊張そのものをより高次なものとしていくことが、人間として成長していくということなのではないでしょうか。 これと同じことを表現した言葉に「清濁併せ呑む(せいだくあわせのむ)」というものがあります。これは、清濁を「混ぜて」飲むという意味ではありません。本来は、清流も濁流も、どちらも受け止める海のありかたを表現した言葉です。 人間のすごさは、清濁併せ呑む海のように、白黒の矛盾をそのままに受け止めることができることです。白と黒をそれぞれ丁寧に掘り下げて、その緊張に眉を曇らせる姿こそ、人間なのです。 一切の決断をするなということではありません。ただ言いたいのは、安易に白黒の決着をつけたくなるとき(緊張から逃げたくなるとき)こそ、僕たちは「知」とはなにか思い出してみるべきだということです。 (原稿も書いていますよっ!) パパの料理、会心の一撃! ●無料メルマガ『人材育成を考える』もよろしくお願いします。 ●twitterもやってます:http://twitter.com/joesakai ■ 新刊発売中です! 新刊は『ビジネスでいちばん大事な「心理学の教養」』という本です。ビジネスにおいて特に知っておくべき心理学のキーワードを、マーケティングや人事など、関連する実務の分野にひもづけて整理してみました。自分用にメモとして長いこと管理してきたものだったりします。よろしければ書店などで手に取ってみてください。 #
by ned-wlt
| 2013-07-23 21:43
| 時事評論のまね
個人のキャリア開発においても、企業経営においても「差別化(differentiation)」は最重要の概念です。「差別化」の目的は、手ごわい競合が多数ひしめく世界において「競争優位(competitive advantage)」を獲得することです。 ●どうして「差別化」が重要なのか シンプルに言い切れば「差別化」されていない「似たようなもの(平均的なもの)」は運命的に「供給過多」になるからです。「供給過多であるということは、相対的に少なくなる「需要」をめぐって血で血を洗うような、勝ち目のない競争に陥るというだけではありません。 「供給過多」とはいえ、そこには、その規模の供給が求められる市場があります。そうした大きな市場は、イノベーターにとっては新規参入の格好のターゲットです。デジカメが、スマホの写真アプリに破壊されつつある(注1)ように「供給過多」となっている市場は、そもそも異分野からの参入を呼び込みやすいわけです。 ●どうして優れた「差別化」は実現されないのか 誰もが「差別化」の重要性を理解していながら、それがなかなか実現されない理由については、ヤンミ・ムンによる『Different: Escaping the Competitive Herd』(邦題:『ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業』)によって秀逸な考察が示されています。以下、その流れを簡単に要約します。 (ステップ1)ある企業が、顧客に対して優れた価値提案を行う(ステップ2)顧客が喜び、その企業の業績が上がる(ステップ3)競合がそれをコピーする(ステップ4)優れていた価値が、その業界の標準になる(ステップ5)顧客の価値判断基準が高まり、顧客の目が厳しくなる(ステップ6)ステップ1に戻る・・・。 このステップを繰り返すと(ステップ1)を実現する余地が時間とともにどんどん少なくなっていきます。いずれは顧客から見て取るに足らない小さな差異を、差異としてなんとか強調するという「むなしい争い」に落ち込んでしまいます。 しかし、心理学者ウィリアム・ジェームスがいうとおり「差異を生まない差異は差異ではない」わけです(注2)。ビジネスの文脈に翻訳すれば「(企業の業績に)差異を生まない(顧客から見て取るに足らない)差異は(実務的には)差異ではない」ということ、ゆめゆめ忘れるべきではないでしょう。 ●どうして競争から完全に脱却するような「差別化」は難しいのか これまでの話をグラフで表現すると、以下のようになるでしょう。平均的な商品と比較して、差別化の度合いが高まれば、顧客からみた価値が高まります。 この境界は、別の表現では「死の谷(valley of death)」として知られています(注3)。これをグラフで表現すると以下のようになるでしょう。これが、競争からの完全なる脱却になるような「差別化」が危険であり、難しい理由です。 レアな本物を見分ける力は、その道の専門家として認知される大切な条件です。それを見分ける力があればこそ「本物」を誰よりも先に「掘り出し物」としてゲットできるわけです。そこには「違いがわかる人」としての尊敬も集まります。「目利き」であるだけで、食べて行けるわけです。 ●破壊的イノベーションの発生メカニズム しかし、まれに、死の谷の向こう側に「破壊的イノベーション(disruptive innovation)」が生まれることがあります。ウォークマン、Google、初代iPod、iPhoneなどがそれに相当するでしょう。こうした破壊的イノベーションは、まず、それが生まれた直後には顧客に理解されません。以下みたいな感じです。 しかし「目利き」がそれを見出し、その「目利き」に頼る人々がその商品を認知した時点で、市場は変わります。一部にはまだ、その「破壊的イノベーション」に懐疑的だったり、その存在自体を認知しない人々もいるため、この時点では、市場は割れます。割れはしますが、しかし、古い市場において、過去最高値を付けていた商品の値崩れが起こるはずです。 この段階になると、過去最高値で取引されていた商品は、行き場を失い、同じコスト構造ではその商品を流通させることができなくなり、市場から消えていきます。 しかしその後は、先に紹介したヤンミ・ムンによるステップを踏んでいく無限ループに入ることになるでしょう。平均的な商品が、高級な商品を「模倣」し、業界そのものが、むなしくも差異とは言えない差異を強調しながら、縮退していくことになります。このサインは、以下のグラフのように、高級な商品の値崩れとして観察することができるはずです。 ●重要なのは「破壊的イノベーション」ではなくて「目利き」 ここまでの話を総括すると(1)「差別化」しないと滅びる(2)しかし「死の谷」の内側ではブランディングに寄与するほどのインパクトは起こせない(3)だから「破壊的イノベーション」が求められる(4)「破壊的イノベーション」を普及させるのは「目利き」である(5)「破壊的イノベーション」ですら延命の手段にすぎない、ということです。 この総括において、唯一、負のスパイラルから独立していて自由なのが「目利き」です。そうした「目利き」があればこそ、競合の平均値から遠く離れたところに、新たな「本物」を生み出すことができるのです。では「目利き」とはいったい、どのような人々なのでしょうか。 この分野には、日本語で「普及学(Diffusion of innovations)」とも呼ばれる研究分野が存在し、特に、社会学者エベレット・M・ロジャーズ教授(スタンフォード大)が提唱した「ロジャーズの普及理論」が有名です(注4)。 普及学によると「目利き」に相当する「初期少数採用者(Opinion Leader)」は、他者にその商品が優れていることを主観的に伝える発信力と影響力をあわせもった人々です。彼らの力によって普及率が市場の16%を超えると、シェアは急速に拡大すると言われています。 ●では「目利き」とは誰のことか すでにお気づきだとは思いますが、こうした特徴を持った「目利き」とは、現代的な言葉では「キュレーター」のことです。 「キュレーター」とは『キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる』著者の佐々木俊尚氏の表現を借りれば「無数の情報の海の中から、自分の価値観や世界観に基づいて情報を拾い上げ、そこに新たな意味を与え、そして多くの人と共有する人」のことです。 過去、こうした人々は「ディレッタント(dilettante)」と呼ばれたことがあります。「ディレッタント」とは本来、学問を愛している素人のことです。意地悪な言い方をすれば、自らの専門性の無さに強いコンプレックスを感じ、それを埋め合わせるように情報を収集し、学問の成果を「知っている」ことに安堵するような存在でした。 しかし、現代の「ディレッタント」には、発信する情報によって影響力を確保し、埋もれようとしている「破壊的イノベーション」に火を灯すという社会的な役割が与えられています。商材でも人材でも、出過ぎた杭は「目利き」に発見されなければ、打たれるものなのです。 ●まとめ 長々と書いてきましたが、成熟した競争社会における「差別化」には、生きるか死ぬかという重大な意味があります。それを自覚するビジネスパーソンは多いと思いますが「死の谷」の内側にいるかぎりブランドは確立されません。 実は、この記事のトップに挿入したイラストには、大切な秘密があります。それは「差別化」を無視して集団を形成しているの男女(左側)はイケメンとかキレイ系のお姉さんなのですが、優れた「差別化」に成功している男性(右側)は、あまりイケていないということです。 そして距離を取っただけでは、市場からは「ニセモノ」と判断されてしまいます。そこで「目利き」に商材を見つけてもらい、その普及を助けてもらえてはじめて「ニセモノ」は「破壊的イノベーション」として認知されるのです。 とはいえ「破壊的イノベーション」と言えども、現代社会においては、その寿命は決して長くなさそうです。それを何度でも生み出せるようになるために開発・開拓すべきリソースとは「目利き」なのだと思います。蛇足ですが、ジョブズのすごさは、彼がイノベーターであり、かつ「目利き」であるという2面性を同時に持っていたことなのではないでしょうか。 (これから、お仕事です!) (注1)例えば野村総合研究所『これからICT・メディア市場で何が起こるのか』におけるp40などを参照ください。 (注2)人事の世界では避けて通れない名著『コンピテンシー・マネジメントの展開(完訳版)』からの孫引き(p17)です。 (注3)「キャズム理論」として知られている概念です。ジェフリー・ムーアによる著作『キャズム』にまとめられており、マーケティングの世界では必読書の一つとして広く知られています。 (注4)エベレット・ロジャーズ『イノベーションの普及』か、軽めの読み物としては、マルコム・グラッドウェル『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』がオススメです。 ■ 新刊が発売となります! 新刊は『ビジネスでいちばん大事な「心理学の教養」』という本です。ビジネスにおいて特に知っておくべき心理学のキーワードを、マーケティングや人事など、関連する実務の分野にひもづけて整理してみました。自分用にメモとして長いこと管理してきたものだったりします。よろしければ書店などで手に取ってみてください。 (ではでは) #
by ned-wlt
| 2013-06-29 09:44
| ちょっぴり経営学
ワールドカップ、決まりましたね!ひところは、日本がワールドカップに行くなんて夢のまた夢だったわけです。これが今となっては、ワールドカップ行きが決まっただけでは、それほど喜べなくなりました(いや、嬉しいんですけどね)。
これ、ちょっと不思議です。 今の日本代表チームの実力が、昔よりも高まっているというのはあるでしょう。しかし、日本のワールドカップの初出場は1998年と、まだ15年前のことにすぎません。しかも1998年のワールドカップでは、日本はグループHで3連敗し、勝ち点ゼロでした。 15年間で急速に成長したわけです。で、僕は、この成長の背景にあるのはサッカーのテクニック向上だけではないと思っています。もちろんテクニック向上があったことは確実であり、選手たちの恐ろしいまでの努力があることは当然です。しかし、もう一つ重要なことがあると思うのです。 それは「一線を越える」という体験です。 「1998年にワールドカップに行けた」という事実は、日本のサッカー選手たちに、日本のレベルはワールドクラスであることを自覚させたはずです。色々と改善点はあるものの、日本のやり方が世界に通用するということが証明されたことは、非常に大きかったのではないかと思います。 「乗れなかった自転車に乗れるようになったようなもの」と言えば伝わりやすいでしょうか。あるいは「過去に一人も東大合格者を出していない高校」と「たった一人であっても東大合格者を出したことのある高校」との間には、大きな差があるというほうが良いかもしれません。 こうした差を生んでいるのは「努力が報われたという事実のあるなし」であり、それは「一線を越える」ということです。より正確には、自己効力感(self-efficacy)を形成するための達成体験があるかどうかです。 奇跡というものは、実際にそれを起こしてみれば「こんなものか」と感じられるものです。そして一度それを起こした人は、以降、同じ程度の奇跡であれば何度でも起こせるようになるのだと思います。 人間の非連続な成長には「努力によって、奇跡を起こす体験」が必要であり、僕たちはそれを、こうして4年に一度のワールドカップ予選で思い出すことができます。そして今の日本人が期待している、日本サッカーの次なる奇跡とは・・・ (本戦、期待しています!) 日本の奇跡 ●無料メルマガ『人材育成を考える』もよろしくお願いします。 ●twitterもやってます:http://twitter.com/joesakai #
by ned-wlt
| 2013-06-04 21:45
| 時事評論のまね
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