窓枠の左下のあたりに、停車しているトラックが見える。あのトラックは、キューバにある緑色の倉庫から、干しバナナが届くのをずっと待っているのだ。
僕は、あのトラックがついに動き出し、窓枠の視界から出ていくことを祈っているのだが、もう長いこと動く気配がない。
もしかしたら、あの緑色をした倉庫は、カーニバルに興奮した若者たちの火遊びによって焼けてしまったのではないか。
そう思うと、僕は窓枠の左下でタバコを吸いながら、キューバから届くはずの「何か」を待っているトラックのドライバーのことが、急にかわいそうに思われた。
窓枠を通して世界を見ている僕は、その「何か」とは、実は干しバナナであることを知っている。しかし彼は、自分が何を待っているのかすら知らないのだ。
僕は、ここから外に飛び出して、彼が待っているのは干しバナナであること、そして干しバナナはもはやキューバから届かないかもしれないことを、彼に伝えることはできる。
だが、僕は間違っているかもしれない。
(注)フィクションです。