映画がハリウッドだからということでバカにする。ロックはイギリスで、グルーブは黒人にしか出せないという。シングルモルトが良くて、ウーロン・ハイはダメなのだという。ワインはフランス産で、うどんは讃岐、ラーメンは豚骨でないとならないのだそう。
過去の失敗でもって全人格否定をする。過去に目覚しい業績があるということで現在の失敗が見逃されたりもする。本の話をしようとして著者の名前を出した途端に、あれは右翼だ、左翼だと続く話を拒絶する。
物事にはほぼ例外なく良い面と悪い面がある。そして、物事の評価というものは良い面から悪い面を引き算した残りの部分をあれこれ言うことではない。何故なら、いくら他に悪いところがあっても、良いものの「良さ」そのものは変わらない真実だからだ。
くたびれた街で安酒を出すのが精一杯な居酒屋にも、親父の気持ちの良い対応を求めて毎週やってくる裕福な客がいる。大事なのは、物事の悪さに隠れている「良さ」を嗅ぎ取る力。そして人がどんな「良さ」を求めているのかを正確に知る力。
安酒だからとバカにすることはあるまい。
(おしまい)