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テオ・ヤンセン(Theo Jansen)というオランダ人のアーティストがいます。彼はデルフト工科大学で物理学を専攻した後、ロッテルダム大学医学部の助手として働いていたという、いわば異色のアーティストです(注)。そんな彼の作品『砂浜動物(strandbeest)』は、BMWの宣伝として使われました。まずは、そのビデオをご覧下さい。
この風の力で動くという軽いプラスチックのパイプで出来ている「動物」は、テオが20年近くの時間をかけて「進化」させてきたものです。砂浜動物が自動車に代わる人間の乗り物となるかどうかは大いに疑問ですが、この作品からは人間の未知なる可能性が強く感じられます。ビデオの中で、テオは次のように発言しています。 The worlds between art and engineering exist only in our minds.そしてBMWの広報は次のように続きます。 And few have the imagination to see beyond them.このBMWのメッセージが伝えるところは重要です。イノベーションというのは、本質的に「常識」からは出てこないということ、それから過去に「吸収力に関する理論-1」などでも触れた通り、異分野にある知恵がミックスされた先にはイノベーションの可能性が存在するということです。 こうしたイノベーションにはある意味「奇才」による独断が必要であり、そのプロセスは多くの人間の意見を多数決によって平均化するような「民主的な作業」とは正反対に位置するものです。奇才は時に複数の分野にまたがる知恵を束ね、人々の常識の境界線を前に押し進めるリーダーになるのです。 *** イノベーションの芽は、その多くが「普通の人達」にとっては「おかしな少数意見」として出現します。とはいえ少数意見であれば即イノベーションであるはずもないので、企業にはこうした「おかしな少数意見」に耳を傾けつつも、それを正しく評価する力が強く求められています。 ところが悪い事に、典型的な経営者というのは他人の意見を聞くことができない独裁者的な人間だったりするので、この「少数意見に耳を傾ける」という姿勢は、経営者個人のモノというよりもむしろ「少数意見を尊重できる企業文化」として具現化されるのだと思います。 (注)ところでオランダのアーティスト達によるこうした自由なデザインは、ダッチ・モダンという特別な名称すら与えられ、それなりに昔から注目されているようです。この小国オランダには、前例を無視しつつ少数意見を張ることをむしろ誇りとするような気風があり、イノベーションの研究には最適の場所ではないかと勝手に考えています。
by NED-WLT
| 2007-06-01 01:34
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