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うちのマンションのエレベーターが動かなくなってもう2年になる。5年ほど前にマンションを管理していた不動産会社が倒産し、一部賃貸物件の所有権だけが怪しげなファンドに委ねられ、現実にマンションを管理しているのは自治会だけとなってしまった。心無い若者に散々いたずらされてエレベーターが止まっても、今となってはクレームを聞いてくれる相手がいるわけでなし、自治会だけではとてもエレベーターを新しくするような予算も捻出できず、そのままとなっている。そもそも修理を頼もうにも、このエレベーターのメーカーも大分昔に倒産していた。
現在、このマンションの入居率は、およそ6割。私たちが入居した2007年時には抽選をしないと入れないほどの人気物件だったのに、今ではその4割が空き部屋となっている。壊れたエレベーターのせいで、マンションの上層部に行くに従って空き部屋が目立つ。私たちが抽選で「当たり」だと喜んだ最上階の角部屋も、毎日の階段の上り下り付きという、もう若くはない私たちには酷いハズレ物件になってしまった。 マンション売り出し当時は、部屋の8割が売り物件で2割が賃貸物件、どちらも満杯だった。当時は心のどこかでバカにしていた2割の賃貸物件は、不動産会社が倒産した今でも、あの怪しいファンドですら業者を入れてメンテナンスをしていて逆に羨ましいぐらいだ。メンテナンスをしないと貴重な入居者に逃げられてしまうからなのだと思う。その点、マンションを自分のものにしてしまった私たちは、彼らの顧客でもなんでもないのだ。実際に空き部屋となるのは、ローンを繰り上げ返済した家族が住んでいたところばかり。 スプレー缶による落書きはマンションのいたるところになされ、正直寂れた感じにも慣れてしまった。最後に自治会がペンキで落書きを消したのは、もう8ヶ月以上も前のことだ。それにしてもこんな落書きですら、どこか画一的で決まりきったパターンばかりなのが実に日本らしいと言ったところか。以前、息を切らしつつ階段を登っていたときに、若者が落書きをしている現場に出くわしたことがある。彼は、ニット帽を目深にかぶるようなお定まりの格好をした冴えない奴だった。どうせなら本物のアーティストに落書きをしてもらいたいものだ。 先月の自治会で問題になったのは、マンションの2階と6階にやってきた招かれざる住民のことだった。40歳前後の男性4人組(5人組?)で、身なりも決して褒められたものではない。最近は、こうした複数の大人による共同生活は決して珍しくはないのだが、どちらの部屋も扉に鍵をかけず、電気が通っていないところをみると、まず間違いなく不法入居者である。自治会の皆で警察に相談に行ったが、廃墟化しつつあるマンションでの不法入居程度では全く取り合ってくれなかった。唯一被害届けを出せる部屋の持ち主たちは、マンションを売ることはとっくに諦め、この町を離れていて連絡先も解らない。自治会の会合を終えて階段を登りながら、エレベーターの動かないマンションの最上階は、不法入居者にすら人気がないのだと思い当たり、思わず笑ってしまった。 ローンはあと12年も残っているが、マンションを売ることは諦め、来月には私たちもここを出てゆくことに決めた。残りの住宅ローンを肩代わりしてくれ、眩しいほどに真新しい共同住宅に住まわせてくれる中華系メーカー(介護用ロボットを生産している)に、夫婦で転職することにしたからだ。給与は驚くほどに少ないが、代わりに朝昼晩の給食が出るし、共同住宅は会社の持ち物で家賃も格安だ。仕事だって以前から興味を持っていた介護福祉関係の仕事だ。このメーカーに勤務する人は休暇もきちんと取れているということは、掲示板でも確認済み。何より家内が共同住宅に付いているキッチンをひどく気に入っているので、私も少しだけ明るい気分だ(給食があるのに、キッチンを使う機会があるのどうかは不明だが)。 大勢の大人が一同に集まって、決められた時間に給食を食べるなんて少し悲しい気がするが、これからは仕事も食事も家内と一緒だし、ピカピカのキッチンもあるし、きっと慣れると思う。契約では向こう20年間、この給食生活をしないとならないことになっているが、あの危険な廃墟に暮らすよりは100倍ましだ。 メーカーとの契約にサインをして晴れ晴れとした気持ちで自分のマンションに帰る途中、廃墟ツアーを楽しむ裕福な外国人の集団に写真を撮られた。昔、家内と香港旅行をした時に、自分が九龍城でしたことの本当の意味がこの時やっと理解できた。家に戻った私は、なんとなく当時の自分が九龍城界隈で撮影した写真を引き出してきて、そこにこのマンションの周辺ではすっかり見かけなくなった子供が大勢いることを発見して驚いた。 最近は、関東近郊の空気には茶色い油が混じっている感じがして実に不快だ。メーカーとの契約が切れる20年後には、もう少し空気の良いところに住めるだろうか・・・。 (注)もちろんフィクションです。野暮ったいですが、これは臆病者の僕が妄想する、このまま何も目だった変化が起こらなかった場合の日本の未来です。我々には、まだコントロールできる未来もあるはずです。こうならないために出来ることは、まだ沢山残されているのではないか、という気持ちを込めています。
by NED-WLT
| 2007-01-10 03:04
| フィクション
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