非連続に思える未来へだって、いつのまにかたどり着いている

先週末、映画『サマーウォーズ』を観てきました。テーマとなっているのは近未来のインターネット上の仮想空間で、未来予想図の理解のためにも観ておくべき映画です。正確にはこの作品は予想や予言ではなくて、『2001年宇宙の旅』のように、今後の技術発展の方向を示してしまうような「リーダーシップ性」のあるものです。





世間で取り上げられることの多い「リアルとバーチャルの対立」は、結局は同時に１人の人間の中に矛盾なく共存（共依存）できるものであって、「リアルとバーチャルは違うね」と、自明のことを言い立てるだけではつまらないということを、この作品は再確認させてくれます。

作品中では、リアルとバーチャルの典型的な対立が、わざとそのコントラストが強調される形で表現されます。しかし、そうして対立しているはずの両極端な事象には、「意外なほどの親和性」がジワリと感じられるのです。

特に目立った対立の表現には、以下のようなものがありました。

■ 伝統 vs. 革新
ストーリーの舞台となるのは、戦国時代から続く旧家の日本家屋とその周辺。ほとんど日本人の記憶の中にしか存在しないような美しい田舎に、膨大な電力と冷却装置を必要とする巨大なスーパーコンピュータと巨大なモニターが設置される。ちなみに、インターフェースとして描かれていたのはキーボード、携帯やDSといった、どれも馴染みのあるものばかり。

■ リアル人脈 vs. バーチャル人脈
陣内家の16代目当主、陣内栄（じんのうち・さかえ）の人脈は、旧家が築いてきたウェットなもの。危機に対応するために、栄は、この陣内ブランドにレバレッジをきかせて（ダイヤル式の黒電話を用いて）警視総監にまで話を持って行く。かたや栄の曾孫（ひまご）である池沢佳主馬（いけざわ・かずま）はネット上では匿名（陣内家のブランドに頼らない）で、格闘ゲームの世界チャンピオンとして不特定多数から支持を受けつつ、同じ危機に挑む。

■ リアル世界の善意 vs. バーチャル世界の善意
プライドや信頼、友情や正義感によって支えられているリアル世界の善意は、「他人から見えやすい」という点において、バーチャル世界の善意とは異なる。世界を危機に陥れる人工知能との戦いは、はじめはリアル世界（陣内家のプライドと家族愛）に立脚した善意であったが、決定的なピンチを救ったのは、オープンソース的なバーチャル世界の善意（ドイツからの匿名ID）だった。

このほかにも、大人と子供、大家族と核家族、男性と女性といった、リアルとバーチャルの対立とは直接は関係のない複数の対立が、非常に複雑なからみとして表現されています。

一見対立しているものも結局は普通に共存しているとすれば、僕たちは、非連続に思える未来へだって、いつのまにか自然にたどり着いているはずです（あたりまえの事かもしれませんが・・・）。

未来へのワクワク感が刺激される、すばらしい映画でした。

（これから原稿を書きます）

追記：2010年3月3日より、ビデオ版の『サマーウォーズ』が発売となっております。

関連記事
「「学び」とは何だろうか。」 2009-02-26
「経験の受け皿」 2009-02-20