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偶然なのですが、同時に3名の方と「マーケティングの基礎」について色々な話をしています。せっかくですから、この3名に僕が伝えたいと思っているベース・ラインを、以下エントリとして公開しようと思います。
顧客は金で買うことは出来ない。良いモノさえ作れば売れたような時代は終わりました。そんな時代の古い文化を残している企業はあまり自覚的ではないようですが、現代は新製品の実に8割までもが予測されていた売上げを達成できずに失敗に終わると言われている時代です。 そうした時代にあって、マーケティングの知識を身につけて行くことは必要条件となりつつあります。以降、僕のブログ記事としては最長(MS Wordで12ページ分)のものになるので、折りたたみます。エキサイトのブログ記事に字数制限があったことを、このエントリを書いてみてはじめて知ったぐらいです(笑)。 ちなみにこのエントリは、導入編、理論編、戦略編の3部構成になっています。この中で僕のオリジナルな部分は最後の「戦略編」における手順に関する記述だけですので、既にマーケティングの基礎を身につけている方は、他の部分はサラッと流して、戦略編を中心に読んでいただけたらと思います。 ■ 導入編:顧客のクラス分け 現代のマーケティングにおいては、とにかく顧客を色々な切り口でもって「分類」する作業が非常に重要なポイントとなります。こうした分類の切り口は多数あるのですが、その中でも特に営業支援ツールとして発展した顧客関係管理(CRM)と呼ばれるシステムで参照されるクラス分けが、マーケティングの世界への入り口としては最も理解しやすいものだと思います。 階層1 商品を知らない潜在顧客 そもそも商品の存在すら知らない人々のことです。この中には、商品の存在さえ正しく認知してもらえれば、すぐにでも購入してくれる顧客も含まれています。無意識には、商品との接触を経験していても、まだ商品の存在を認知していない潜在顧客もここに含まれます。詳しくは過去のエントリ「接触回数と好感度の関係について」を参照して下さい。 階層2 商品に関心のある潜在顧客 商品がもたらす効果を理解しており、商品に関心を持ってはいるものの、なんらかの理由で購入には至っていない潜在顧客です。こうした潜在顧客の心の中には「いつか買いたいものリスト」があります。そのリストにおける順位を競うということは、液晶テレビと自転車といった、全く異なる商品の間に生まれる競合関係を意識することです。詳しくは過去のエントリ「ブログのゆくえ、関心のゆくえ」を参照してください。 階層3 新規顧客 商品を購入して間もない顧客です。実際には、一度きりであれば運や宣伝の力で買わせることが可能であり、新規顧客がたくさんいる状態というのは、それだけでは商品が本当に顧客を満足させているのかは解りません。偶然のブームで商品が売れてしまい、その品質が顧客を満足させるのに足りていなかったりすると悲惨です。ブームというのは、一時的な需要に対応するために仕入れた設備の支払いや人件費が業績を圧迫して、企業の存続を危うくさせる要因となります。 階層4 リピーター 複数回、商品を購入してくれた顧客です。競合の商品を選ばずに、自社の商品を繰り返し購入してくれた顧客は、商品に「ある程度は」満足しているはずです。ただし、単純に競合よりは「まし」と思われているだけであったり、惰性での購入であることも多く、リピーターの数だけでは商品の本当の力は解りません。リピーターだった顧客を、アッサリと競合に持っていかれた経験がある人は多いでしょう。 階層5 ファン ファンの数こそが、企業の本当のマーケティング力を表すバロメーターです。ファンのレベルになると、商品が好きでということはむしろまれで、その商品を提供する企業の理念にまで共感していることが多いものです。例えば、ハーレーダビッドソンのファンは、バイクではなくて「反逆のライフスタイル」を購入しているという視点は重要でしょう(コチラを参照しました)。 余談:顧客が個人の場合(B2C)と、企業の場合(B2B)の違いについて 顧客が個人(消費者)の場合(B2C: Business to Cosumer)は、顧客との関係性は個人対個人というものになり、顧客が誰であるかを把握するのは(数は多くなりますが)比較的容易です。これが顧客が企業(法人)である場合(B2B: Business to Business)は、少し状況が複雑になります。 まず、交渉などの営業の前面には現れてこない、組織の裏手に隠れた顧客の存在を意識して、そこを追いかけないとなりません。しかし、企業の顧客の場合は、個人の顧客よりも冷静で、計算高く、非個人的かというと、これは全くNoであるという意見がマーケティングでは主流です。 すなわち、仮に顧客が企業であったとしても、関係性の構築と維持は、個人間の人間的で感情的なものになるということです。この意味において、僕のエントリでは、顧客が個人の場合と企業の場合でマーケティングの対応を特に分けて考えません。 ■ 理論編:顧客を上位クラスへ「アップグレード」する 航空会社が発行するマイレージカードの上位会員への優遇(ゴールド・エリート会員のラウンジへの招待など)にも見られるとおり、企業は上位の階層にいる顧客を特別扱い(ひいき)する必要があります。この点に関しては『お客様は「えこひいき」しなさい !』を読むことをオススメします。こうした特別扱いがあればこそ、新規顧客がリピーターに、リピーターはファンになりたいと考えるようになるからです。 顧客を5つの階層にクラス分けしているのは、4枚の壁です。この4枚の壁に少しずつ穴を開けていくことで、各階層にある人の数をコントロールし、ついには右の図にあるような「マーケティングに強い企業」になることができます。この壁に穴をあけるという作業こそが、マーケティング活動の本質です。 もちろん、企業や商品の成長段階に合わせて攻撃をしかけるべき壁が決まるのですが、それでも、目安とすべき「攻撃の手順」があると思います。以下に紹介する「手順=戦略」の部分は、僕が自分の経験から個人的に考え出したオリジナルな部分です。逆にここまでは、マーケティングのプロであれば誰でも知っている話でした。 ■ 戦略編:マーケティング戦略の基本 顧客を5つの階層にクラス分けしているのは、各階層の間にある4枚の壁です。この4枚の壁の攻撃には、僕は手順があると考えています。以下、攻撃の手順ごとに壁に番号を振り、話を進めます。 第1の壁:期待の管理 十人のうちの一人がリピーターになってくれれば、経営は成り立っていく。逆に言えば、十人のうちの九人に気に入ってもらえなくても、べつにかまわないわけだ。そう考えると気が楽になる。しかしその『一人』には確実に、とことん気に入ってもらう必要がある。そしてそのために経営者は、明確な姿勢と哲学のようなものを旗じるしとして掲げ、それを辛抱強く、風雨に耐えて維持していかなくてはならない。商品を買ってくれる顧客がいない限りは、いかなるビジネスも成り立ちません。しかし、新規顧客の獲得には、リピーター獲得の5倍~7倍のコストがかかると言われています。さらに、近年では新規顧客の獲得コストは上昇し続けているという指摘もあり、いきなり新規顧客の獲得に動くのは賢くありません。 こうした新規顧客獲得のコストを考えれば、活動の対象となっているのが全く新しい製品の開発でない限りは、まずは既存の顧客にフォーカスするのがマーケティング活動の王道であることは明らかでしょう。どこの会社でも、今現在の売上げは100%既存の顧客によって成り立っていることを決して忘れてはならないのです。 他の壁に穴を開ける前に「一度商品を買ってくれた顧客は、高確率でリピーターにできる」という状態(システム)を構築しておくことが重要です。さもないと、いつでも最もコストのかかる新規顧客の獲得にばかり血道を上げることになり、利益がおぼつかなくなるからです。 新規顧客がリピーターに「昇格」してくれるために必要になる最重要の概念が「期待の管理(expectation management)」という発想です。ライフネットの岩瀬さんも、過去のエントリで「結婚」という彼らしいユニークな文脈で、このexpectation managementに触れていました。 新規顧客が商品の購入するとき、商品のもたらす効果にある一定の「期待」を持っています。この期待を上回ることができれば、新規顧客はリピーターになってくれる可能性が高まります。 逆に期待を裏切って顧客を失った場合、顧客は平均で11人の人に商品の悪い評判を語り、さらにこの11人がそれぞれ5人の人に悪い噂を流すと言われます。全体で66人もの人に、商品を悪く宣伝されてしまうということです。 期待を常に上回るように心がけていれば「最高の営業マンは、満足している顧客」と言うように、後はクチコミでリピーターの輪は広がっていきます。しかし逆に期待を裏切れば、その損出は無視できないほどに大きなものになります。現代的な評判の「加速度」を意識する必要があるということです。 売りたいがために、商品について嘘をつくのは最悪です。賢い企業は、自社にできることだけを約束し、実際にはそれを十分に上回る商品を提供することで顧客を喜ばせているのです。 自分の商品に関する悪い情報は、とにかく先回りして顧客に話してしまうことが重要です。特に、いずれ顧客が見つけることになる商品の欠点を隠しておくことは、この期待の管理という面からは致命的な間違いです。 逆に欠点を正直に話すことで、顧客は企業への警戒を解いてくれることも多いものです。ここで欠点とは「顧客が気に入らない点」であって、自分達が考える弱点とは往々にして同じではないので注意してください。 誇大広告のリスクがいかに大きなものであるかを考えてみて下さい。商品がもたらすことができる実際の効果を誇張して顧客に伝えれば、顧客はリピーターにならないばかりか、顧客は商品に関する悪い情報を多くの人に伝えます。 第二の壁:関心の獲得 言うなればこれは、潜在顧客の関心の「脳内シェア争い」です。ここで競合となるのは、もはや同じ業界の企業ばかりではありません。いかなるモノやサービスであれ、顧客の関心を自社と取り合うものは全て競合です。 もちろん、全ての潜在顧客に営業マンが何度もアタックをかけたり、テレビなどの大手メディアで大々的な広告を打ったりすることができれば、それが一番効果的でしょう。しかしこうした活動は、一部の大企業を除けば予算的に難しいのが普通です。 そこで低予算でも有効になるのが「ターゲットの絞込み」です。大手メディアに広告は出せなくとも、マイナーな特定業界の専門誌であれば広告費用も少なくて済むでしょう。さらに地域や季節、特定のイベントや時間、特定のブログサービスやSNSに絞った広告や営業を考えれば、その予算はもっと少なくて済みます。 誰でも年齢や性別、年収や学歴によるターゲットの絞込みには気がつくと思いますが、そうした「誰もが気がつくターゲット」というのは、多くの競合が同時に狙っているので、かけたお金の割りに結果が伴わなかったりするので注意して下さい。 また、この段階での目標は、商品を知らない顧客に商品を認知してもらうことなので、広告や営業は、基本的に顧客の無意識へのアタックになるという点にも注意が必要です。いきなり商品の詳しい説明を広告に載せたりするのではなく、伝えたいメッセージを出来る限り短くして、印象に残るような工夫を考えなくてはなりません。 ターゲットを絞れとはいえ、実際のビジネスでは、販売前には思っても見なかった顧客がファンになってくれたり、逆にターゲットだと思っていた人々には全く売れなかったりするのもよくあることです。 予想もしなかった人に、予想もしなかった理由で商品を感謝されたりした経験は誰にでもあるでしょう。とにかく、こちらが本当の意味で顧客を選べるなんていう考えは、マーケティングのおごりです。詳しくは、過去のエントリ「「商品が売れた理由」を知っていますか?」を参照してください。 実務では、とにかく誰であれ、自社製品を買ってくれた顧客のケアから全てがはじまるのであって、あくまでもこちらが顧客から選ばれる立場にあるという点は強調しておきたいです。 第三の壁:相互依存な関係の構築 これはマンションを購入した人が、購入前は地価の値動きやら、金利の変動やらが不安で不安で仕方がなかったのに、いざローンを組んでマンションを自分の物にしてしまった後は、賃貸よりも持家のほうが圧倒的に得だと楽観的に信じ込むのと同じです。 また、就職活動中は、どこの企業にもそれなりに良い部分と悪い部分が見えていたのに、いざ就職先が決まると、自分が入社することになった企業こそが最善の選択に思われ、さらに他社の悪い部分が強調されて感じられたりするようになるものでしょう。 人間には、既に自分がしたことと一貫していたい、他人に一貫した人間だと思われたいという強迫観念があります。特に、ある立場を取るという表明を外に向かって行うことは「過去の自分の決定と立場を何としても死守しなければならない」という圧力を自分で自分にかけるということです。これを俗に「一貫性の魔力」と言います。 ファンとリピーターの違いは、ファンは自らがその商品のファンであることを内外に認めている(立場を表明している)という点です。ファンはこれによって「一貫性の魔力」の影響下にあるという点が重要なのです。 ファンは、リピーターよりも商品の評価が甘くなります。期待を裏切るような商品を出せば、リピーターは去って行きますが、ファンの多くは商品ではなくて、企業の理念に賛同しているので、リピーターよりは我慢強いものです。 確かにリピーターも商品の宣伝をしてくれます。しかし、ファンによる商品の宣伝には自己が投影されますので、リピーターのそれとは比べ物にならない力がこもります。 これが、商品に関心はあっても商品の購入に踏み切れていない潜在顧客など、他の階層にある顧客の背中を押す強烈な原動力になります。特に有力な人物がファンになってくれた場合は、その事実がそのまま大きな宣伝となります。 もちろん、ファンが離れるほどに信頼を裏切ってしまえば、商品のネガティブな宣伝を大々的に実行することになってしまうので、企業はファンを特に大切にしないとなりません。端的に言えば、ファンと企業は、その評価において相互に依存する状態にあるということです。ファンは企業にとっては「身内」なのです。 こうしたファンの獲得には、個人が、ある商品や企業のファンであることを安心して表明しやすい雰囲気作りが重要になります。この雰囲気作りの鍵になるのが「他にも多くの人が支持している」という事実(「社会的証明」と言います)を強調することです。もちろん商品が優れていて、そうした事実があることが前提です。 お笑い番組では、視聴者に笑ってもらいたいポイントで、録音された「笑い声」が流れますね。あの笑い声が無ければ、意外と笑えないギャグが多かったりすると感じたことはありませんか? 講演会などでは、スピーチが終わった直後に誰かが拍手をすると皆が一斉に拍手をしますが、逆に誰も拍手をしないとシーンと静まり返ったまま、間の悪い時間が流れることもあります。人間は、どうしても他人の判断が気になる生き物なのです。 実際、人間は、他人が何を正しいと考えているかに基いて、物事が正しいかどうかを判断する傾向があることが証明されています。要するに、多数決で人数が多いほうの選択を魅力的に感じるということです。子供は親に何かを買ってもらいたいときに「学校の皆が持っている!」と主張しますね。子供ですら、こうした心理的なツールを親に対して利用しているのです。 「お友達紹介キャンペーン」は、ここで取り上げた理論を利用した優れたマーケティング手法です。この紹介キャンペーンは、顧客が友達に商品を紹介して、友達がその商品を買った場合は、なんらかの特典がもらえるというものです。 友達に商品を紹介した顧客は、自分がその商品に満足していることを伝えることになり、そこに「立場の表明」が行われ、この顧客はリピーターからファンに昇格します。このときには「他の皆も商品を使っている」といったことがコミュニケーションに利用されるはずです。 このキャンペーンの重要なポイントは、仮にこのキャンペーンによって新規顧客が得られなくとも、リピーターによる立場の表明は発生するため、ファンが増えるというところです。 第4の壁:スイッチング・コストへの攻撃 競合もマーケティング活動を正しく行っている限りにおいては、当然、新規顧客をリピーターに、リピーターをファンにしようと日々血の出るような努力しています。実は、この第4の壁を越えることが一番難しいのです。創業まもない企業は、この新規顧客の獲得からマーケティング活動が始まるからこそ、その多くが成功しないのです。 例えば、多くの人がマックPCに関心を持ってはいても、実際にはウィンドウズPCのリピーターであることをなかなか止められないでしょう。これには「スイッチング・コスト(乗り換えのコスト)」という概念が密接に関係しています。 ウィンドウズPCからマックPCに乗り換えるということは、単純にマックPCを買うということではありません。マックPC本体にプラスして、必要になるソフトも新たにマックPC用として買う必要があります(金銭的コスト)。さらに、それらをインストールしたり、購入したりするのは面倒なことです(心理的コスト)。そして慣れ親しんだウィンドウズと同じようにマックPCを使いこなせるようになるには学習のために相当な時間がかかります(学習のコスト)。こうした乗り換えにかかる全てのコストを足し算したものがスイッチング・コストなのです。 競合から顧客が奪えるのは、そんなスイッチング・コストを支払ってもなお、こちらの商品のもたらす効果のほうが魅力的な場合に限られるのです。 理屈では、商品のもたらす効果を高め、商品の価格を安くすれば、競合から顧客を奪えます。しかし現実には、競合の商品だってそれなりに魅力的だし、価格に影響する商品の製造コストだって極端には違わないはずです。では、実務的に打てる手はないのでしょうか? 実は、スイッチング・コストは一定ではありません。 簡単なことではありませんが、オプション部品や操作性において、自社商品の競合との互換性を高めれば、金銭的なコストと学習のコストに攻撃をしかけることが可能なのは明らかでしょう。とはいえ、これらの攻撃にはそれなりにコストがかかります。そんなスイッチング・コスト中でも最も容易に攻撃できるのは心理的なコストです。心理的なコストは、以下3つのタイミングにおいて小さくなります。 タイミング1.競合が不在のときの「仕方ないな・・・」を狙う あなたがラーメン屋を経営しているとすれば、近所のラーメン屋の休日を漏れなくチェックし、その日に「お客様感謝デー」を重ねます。タクシー会社を経営しているのであれば、電車のストやダイヤの乱れを狙うと効果的でしょう。競合が新商品の開発に遅れたり、在庫や部品を切らしたりして、顧客が商品が必要なきに競合が商品を供給できないケースも当然狙います。 タイミング2.競合が忙しいときの「客をなめているのか!」を狙う 決算の前後、好況の出入り口、不況の出入り口、特定事業への新規参入や撤退のときというのは、どこの企業も忙しくなります。こうしたタイミングでは、競合にとって優先順位の低い顧客への対応が遅れるもので、顧客は自分が大切にされていないことに気がつきます。このタイミングなら、競合の顧客が「寝返る」可能性が高くなります。 タイミング3.顧客に余剰な資金があるときの「何でも良いから、とりあえずもってこい!」を狙う 個人の顧客であれば、やはり給料日やボーナスの前後を狙います。結婚や昇進などのイベントで、金回りがよくなる人もいるので、そうしたタイミングもフォローします。 小さなノウハウとしては、解り易いボーナスの時期は、ボーナス商戦が起こっていることが多く、そのタイミングでの競争は激しすぎるので、ボーナスが年3回ある企業や、ボーナスの時期が特殊な企業などに狙いを絞ると、意外と楽に顧客を奪うことができたりします。企業であれば、業績の良かったときはもちろんですが、期末で予算を使い切らないとならないときが大きなチャンスなのは広く知られています。 砂漠で水を売るのだって、顧客の喉が渇いているタイミングを狙わないとならないでしょう。競合から顧客を奪うためには、商品への需要が生まれる「貴重なタイミング」を逃してしまってはどうにもならないということです。 ■ まとめ 良いモノさえ作ればとにかく売れたような時代は終わりました。そこでマーケティングの基本を知っておく必要があるのですが、その入り口としては、顧客との関係性の管理(CRM)の発想を理解するのが良いと思います。B2BとB2Cのどちらにも適用できる点も、このモデルの優れた特徴です。 このモデルの運用(戦略の実行)において最も重要なのは「リピート顧客を生み出す仕組み」の構築です。これががあればこそ、高コストをかけて多くの顧客を競合から奪っても、後のリピーター化によってそのコストを回収できるのです。 (長文を最後までお読み頂き、ありがとうございました) ペンギンの顔 「マーケティングの現在」 2009-01-20
by NED-WLT
| 2009-03-16 05:22
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